チームとは、共通の目的、達成すべき目標、そのためのアプローチを共有し、連帯責任を果たせる補完的なスキルを備えた少人数の集合体である。
メンバーのタスクは現実には、複雑な依存関係になる場合が多いが、これらを典型的な関係に分類し、それぞれの特徴や、重要なポイントを知っておくことは、よいチームワークを維持するために役に立つと考えられる。
以下、代表的なものについて紹介する。
(1)加算型
メンバーは各々独立して仕事をし、その合計はチームの仕事量になる関係。テレアポをとるチームは、アポインター一人一人のアポイント量の合計が、チームの仕事量になる。大型店舗の販売員チームなどもこれに近い。
(2)分離型
メンバーは各々独立して同じ仕事をし、一人でも正しい結果が出たら、チームの目的が達成できる関係。トラブルの原因究明や、問題の解決などをチームで行う場合がこれに近い。
(3)結合型
グループのメンバー全員が自分の責任を果たして、はじめてチームの目的が達成される関係。
何人かで山登りをし、全員が登頂することがチームの目的達成というような場合であるが、実際の仕事では、このように全員が同じ仕事をするのではなく、分業していることがほとんどである。
その場合には、メンバー全員が、各々に与えられた分担を完遂することで、チームの目的が達成される。
結合型はさらに、メンバーのタスクの関係性に応じて次のように2つに分けることができる。
ここでは、結合I型と、結合II型ということにする。
結合I型は、自動車の製造ラインのように、前の工程の組み立てが終わったら、次の工程のメンバーに引き継いでいく、といったシーケンシャルな関係である。
結合II型は、あるメンバーの役割、仕事の内容や量が、他のメンバーの仕事の遂行によって、変わってくるという関係だ。
この型は、メンバーのタスクの関係性が、これまでで最も強いものになる。
もちろん、実際の仕事では、このよう型にきれい分類することはできない。
しかし、チームのタスクは、このような依存関係からなるサブタスクが組み合さってできており、それらをメンバーに割り当てることで、メンバーのタスクの依存関係に違いが生じる。また、チームのタスクが全体として、これらの依存関係のひとつに近いと見ることができる場合がある。
これに関して、面白い例を紹介しよう。
あるアメリカの研究者が、プロ野球とプロバスケットボールの分野で、全ての選手の能力について1〜10で評価を行った。その後、その点数をチームごとに合計し、それを元に各チームの次シーズンの成績を予想した。シーズンが終わって実際の結果と比べると、一方のスポーツでは結果の90%が予想どおりになり、一方では、35%しか正しく予想できなかった。
さて、読者は、どちらが野球、またはバスケットボールだと思うだろうか。
結果は、90%の方が野球であった。
このことから、野球チームの強さはバスケットボールに比べて、個人の能力の合計に、より近いチームタスクであるということができる。
確かに、野球チームでは、投球、打撃、捕球などのタスクはシーケンシャルにつながっている。
すなわち、結合I型に近い。一方、バスケットボールは試合中、他のメンバーのプレーに合わせて自分の役割を変えることが多い、すなわち結合II型に近いと言える。
これを知った筆者は、スポーツの個人賞を調べたくなった。
野球には、個人賞がたくさんあるのは読者の知るところだろう。
打者には、ホームラン王、打点王、首位打者、安打王、盗塁王、犠打王などがある。
投手にも、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率、さらにはセーブ王もある。
一方、日本のサッカーの個人賞を見てみると、得点王、MVP、ベストイレブンぐらいしかない。
サッカーが結合II型のチームワークだと考えると、スポーツにも、チームのタスクの依存関係にタイプがあり、それによって個人賞のありかたにも違いが出てくるということがわかる。